殲滅ルキファー・挿絵イメージ2
PIXIV企画で開催されていた、「スニーカー文庫挿絵コンテスト」
で描いたものです。三日で二枚。うーん、早いのか遅いのか分か
りません(笑)
とりあえず、断片的にアップされている文章を読み、それで想像
力を働かせて描いてみました。
女の子の服や騎士服のデザインは変更してます。
ちょっと色々と実験してみようかなと思いまして。
こんなのも、商品の挿絵じゃ絶対で着ない事ですね(汗)w
ジュリエットの方がなんか知りませんがお気に入りになってしまい
ました。なので、ジュリエットがメインの挿絵になってますw
小説の大まかな内容や物語の輪郭が分かれば、またイラストの雰囲気
も変わってくるんだろうなぁと思ってますが、とりあえず、まあ
こんなとこでいかがでしょう、ということで。
下記に、小説の挿絵部分をアップしておきますね。
断片的にしか内容が分からないので、ちょっと大変でした。
楽しいのですが、形にする、というのは、いつも海の苦しみが
伴うものですね(^^;)
2010年11月15日
挿絵部分小説内容
-8-
「――どういうことなんだよ」
非常階段には、伊吹と藤枝以外、誰もいない。
昼休み、二人で話ができそうな場所といったら、ここくらいしか思いつかなかった。
藤枝は首をかしげた。
「どう、といいますと?」
「言ったよな。藤枝。おれを守るって」
「はい。ジュリエットはそう、申しあげました」
「てことは、何か知ってるんだろ。おれに……何があったのか」
「少しずつご説明しようと、思っておりました」
藤枝は綿菓子みたいな笑みを浮かべた。
「いきなり、いっぺんにだと、きっと大変ですよ」
そんな笑顔を見せられると、まあいいかと流してしまいそうになる。
でも、そういうわけにはいかない。
「……おれ、金曜の夜に――こんなこと言ったら、おかしいと思うかもしれないけど……」
伊吹が階段に腰を下ろすと、藤枝は二つ下の段でしゃがんで、目線の高さをあわせた。
「思いませんよ。そんなこと」
「そっか」
伊吹はちょっとだけ笑って、ため息をついた。
「――おれ、もしかしたら、殺されたのかもしれないって、思うんだ」
「はい」
「……はい?」
「伊吹さんは、一度、お亡くなりになりました」
「な……」
「そうして、たぶん――」
藤枝は伊吹の胸の真ん中に、人差し指をそっとあてた。
「このあたりに、不死原動機――イモーターを埋めこまれて、生き返ったのですよ」
「生き返っ……」
「はい。あっ……」
藤枝は、ぱちん、と両手を打ちあわせて、にっこりと笑った。
「申し遅れました。ジュリエットは、オートドールです」
「……オート、ドール?」
「はい。日本語に訳すと、自動人形、ということになりますね」
「人……形……?」
「ええ」
急に、藤枝の瞳の色が変わった。黄緑色から、淡紅色に。色が変わっただけじゃない。輝きだした。
「心配は無用です。ジュリエットが、伊吹さんをお守りします」
-9-
「わたしは……」
美早は正奈の胸を噛むようにして言った。
「殺さないと。わたしが、この手で――伊吹を」
人を拒む暗闇の中で、何が行われているかなんて、知らなかった。
知らないほうがよかった。
夜が更けると、この公園には人が寄りつかない。
あまりにも闇が深すぎる。
あえてそんな場所で向かいあう理由があるなんて、思いたくなかったんだ。
「……なんでだよ……!」
伊吹が前に出ようとすると、藤枝に制止された。
藤枝は制服姿だが、パラソルの形をしたシールドを持ち、ランドセル型ウェポンケースを背負って、武装している。
その瞳は淡紅色だ。爛々と光っている。
「お下がりください。伊吹さんには、荷が重い相手です」
声音も普段とは違う。ハードボイルド・スタイル――戦闘モードだ。
闇の向こうには、二人の騎士がたたずんでいる。
青いラインが入ったフード付きの白いロングコートは、騎士の法衣だ。
手には、リファイングラスセラミック製の透明な聖剣――カラドボルグ。
きわめて鋭利だが、耐久性に欠けるこの聖剣を、騎士はたいてい二本携帯する。
「なんで、こんなこと……!」
伊吹は叫んだ。叫ぶだけで、藤枝を押しのけることはできなかった。
「理由は、一つ」
背が高いほうの騎士が、聖剣をすっと振りかざした。
「きみは定命の摂理を乱す不死の獣と成り果てた。その人形と同類だ」
「獣って……」
伊吹はもう一人の、背の低いほうの騎士に目をやった。視線に気づいたのだろう。
「……すみません」
背の低いほうの騎士は、呟くようにそう言って腰を低くし、聖剣の切っ先を右斜め後方に向けて構えた。
「お下がりください」
藤枝の声は冷ややかだった。
「――覚悟」
背の高い騎士が駆けだした。背の低い騎士は側面から回りこんでくるつもりらしい。
本気なのか。本当にやるつもりなのか。
やらないといけないのか。
「……どうして……!」
伊吹は絶叫した。
「やめてくれ、美早……! 喪守……! こんなの、おかしい! 間違ってる……!」
-10-
何が間違っていて、何が正しいのか。
誰が決める?
誰に決められる?
……むかし、むかし(それは、さほどむかしではないのかもしれませんし、
もしかしたら、今かもしれないのですが)、
いっぴきの、おしゃれなうさぎが、おりました。
彼(もしかしたら、彼女、かもしれないのですが)の名は、
ジェスター・ラビット。
上等な燕尾服を着て、立派なシルクハットをかぶり、竜のステッキを手に、
ぶらぶらと、星見月公園を散歩する、陽気なジェスター。
ジェスターは、言いました。
「よおく、お聞きなさい、みなみなさまがた。
長い、長い、終わることのない戦いに、すっかり疲れ果ててらっしゃる、
みなみなさまがた。
まず、知ることです。その戦いは、終わりがない、果てがない、夢も希望もない。
あの星くずのようなものです!
消えることもなければ、手をのばして、つかみとることもできない。
みなみなさまがた、戦いはもう、およしになったほうがいい。
何? そうもいかぬと?
ならば、お聞きなさい、このジェスターがひとつ、予言をば。
それは、意外なところから、現れるでしょう。
それは、黄色いおべべを、着ているかもしれません。
赤いおべべを、着ているかもしれません。
口紅を塗っているかもしれません。格好つけて、口ひげを生やしているかもしれません。
それは、世紀の始まりか終わりか、その間に、現れるでしょう。
それは、長い、長い、果てしなき戦いを、
握りつぶすように、踏みつぶすように、
悲しみのかけらに変えるように、涙の川に流すように、
罪なき者を無慈悲に八つ裂きにするように、重罪人を慰めくびり殺すように、
ろうそくの火を吹き消すように、
終わらせてしまうのです。
それは、意外なところから、現れるでしょう。
このジェスターが、その名をお教えいたそう。
その者、
殲滅する者、
その名は、ルキファー。
それは、意外なところから、現れるでしょう」
(おどけ予言者ジェスター・ラビットの予言)
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