新しく発言する EXIT 「北へ。」
お久しぶりです










  お久しぶりです 岡村啓太 2003/11/22 15:50:03 
  友達の基準川原鮎編 岡村啓太 2003/11/22 15:51:32 
  <上からのつづき> 岡村啓太 2003/11/22 15:56:24 
  <上からのつづき> 岡村啓太 2003/11/22 15:57:40 
  <上からのつづき> 岡村啓太 2003/11/22 15:59:22 
  <上からのつづき> 岡村啓太 2003/11/22 16:00:23 
  <上からのつづき> 岡村啓太 2003/11/22 16:01:14 
  <上からのつづき> 岡村啓太 2003/11/22 16:02:41 
  <上からのつづき> 岡村啓太 2003/11/22 16:03:19 
  <上からのつづき> 岡村啓太 2003/11/22 16:04:12 
  あとがき 岡村啓太 2003/11/22 16:05:04 
  読みましたですよ( ̄▽ ̄)2003/11/26 00:14:53 
  │└読んでくださってありがとうございます 岡村啓太 2003/11/27 10:24:18  (修正1回)
  読ませて頂きました! 長良川の鮎 2003/11/29 17:31:38  (修正5回)
   └いつも感想ありがとうございます 岡村啓太 2003/12/01 01:28:57 










  お久しぶりです 岡村啓太 2003/11/22 15:50:03  ツリーに戻る

お久しぶりです 返事を書く ノートメニュー
岡村啓太 <vhhyhipvfj> 2003/11/22 15:50:03
本当にお久しぶりです。
初めてお目にかかる方は初めまして。
岡村啓太と申します。
以前にこのHPで‘北へ。WI’の短編小説を掲載してもらった事のある者です。

遅くなりましたが、DD発売おめでとうございます。
私も購入してプレイしていまして、現在メインヒロインの5人をクリアーしたところです。
やはり北へ。はおもしろいです。楽しいです。感動します。
今回のヒロインも良い娘ぞろいでうれしいです。
ちなみに私は温子ちゃんがお気に入りです。

さて、今回はDDをプレイしていて、また北へ。のお話を書いてみたくなってしまいまして。
だからといって、すぐにDDのキャラでお話を思いつけるわけもなく。
以前から暖めていたネタを使ってWIのキャラでまたお話を書かせていただきました。

こんな時にしか掲示板の書きこみをしない不心得者ですが、
よろしければ読んでやって下さいな。

それでは本編をどうぞ。










  友達の基準川原鮎編 岡村啓太 2003/11/22 15:51:32  ツリーに戻る

Re: お久しぶりです 返事を書く ノートメニュー
岡村啓太 <vhhyhipvfj> 2003/11/22 15:51:32
   友達の基準   川原鮎編


「琴梨ちゃん、琴梨ちゃーん」

 テニスの部活中、不意に琴梨を呼ぶ声がコートに木霊した。
 最近聞きなれたこの声の持ち主は・・・。
 嫌な予感を覚えつつも振り返ってみると、そこには、

「琴梨ちゃ〜ん」

 予想どおり、里中先輩がこちらに向かって駆けてくる姿があった。
 私たちの1年先輩の幽霊部員、里中梢。
 最近まで部活中はほとんど姿を見なかったんだけど、ついこの間、ふらりと部活に顔を出しにきた。
 でも、2年や3年の先輩からは相手にされず、1年もどう扱っていいか分からず戸惑っているばかりだった。
 けれど、なぜか琴梨だけは先輩に気軽に話しかけ、テニスのレッスンまで始めたのだ。
 後輩にレッスンを受けるのもどうかと思うんだけど、
 里中先輩は気にした様子もなく、うれしそうに琴梨から手ほどきを受けていた。
 琴梨の方も実に楽しそうにしていたので私たちは何も口出しできなかったのだ。
 それ以来、里中先輩は以前よりかは頻繁に部活に顔を出すようになった。
 しかし、部活に来ても大抵は琴梨としゃべっているだけで、練習なんてしてないんだけど。
 どうやら里中先輩はあれ以来、琴梨が大のお気に入りになったらしい。

「あっ、里中先輩。おはようございます」

 琴梨も先輩に気づいたようで、うれしそうに顔をほころばせた。
 あんな先輩に会って何がうれしいのか私にはさっぱり分からないんだけど、
 琴梨は先輩の顔を見ると、いつもうれしそうにする。
 以前、先輩の事をどう思っているか琴梨に聞いた事があるんだけど・・・。

 「えっ?里中先輩。うん、一緒にいると楽しいよ。
  先輩ってとっても頭がいいの。私が知らないような事いーっぱい教えてくれるんだ。
  知的な感じでちょっと憧れるよね」

 琴梨にとってあの先輩は知的で憧れの対象になるらしい。
 とても信じられないけど。
 悪い人じゃないっていうのは、ここ最近琴梨と一緒に付き合ってみた感じで分かるんだけど。
 でも、私はどっちかというと苦手だな。
 
 そんな事を考えている間に先輩は琴梨のすぐそばまでやって来て話しかけていた。

「もぅ、梢でいいって言ってるのに、いつまでもそんな他人行儀な」

 いや、他人でしょうが。

「でも、先輩は先輩だし・・・そんな呼び捨てなんて・・・」

 琴梨はちょっと困った顔をしながら照れくさそうに答えた。
 当然の反応よね。

「う〜〜、もう!琴梨ちゃんったら、いつも可愛いわぁ♪」

「きゃあ!」

「ラブラブ」
 
 何を思ったのか先輩は唐突に琴梨を抱き締めると、すりすりし始めた。
 この行動はさすがに周りの目を引いたらしく、あたりから好機の視線がビシバシと突き刺さってくる。
 中にはこっちを見ながらクスクス笑っている人までいるし。

「あの、先輩、ちょっと、止めてください」

 さすがにこれは琴梨も嫌だったらしく、恥ずかしそうにしながら先輩に腕に中でもがき出す。
 だから、仕方なく先輩は残念そうにしながらも琴梨を解放した。
 
「も〜。琴梨ちゃんって照れ屋さんね」

 いや、本気で嫌がってたと思うよ。

「ふ〜・・・」

 先輩から解放された琴梨は少し頬を赤らめながら大きく安堵の吐息を吐き出している。
 災難だったね、琴梨。

<下につづく>










  <上からのつづき> 岡村啓太 2003/11/22 15:56:24  ツリーに戻る

Re: お久しぶりです 返事を書く ノートメニュー
岡村啓太 <vhhyhipvfj> 2003/11/22 15:56:24
<上からのつづき>

 でも、先輩はいったい何をしに来たのだろうか?
 テニスウェアは着ているけど、どうせ練習しに来たわけじゃないんだろうし。

「ところで、今日は何の用なんですか?先輩」

 その疑問を解消すべく、私が声をかけると、

「あっ!鮎ちゃん。おっはー」

 先輩はようやく私がいる事にも気づいたのか軽い口調で挨拶してくる。 
 呆れた。どうやら琴梨しか目に入っていなかったみたい。

「そうそう。あのね。今日は聞きたいことがあるんだけど」

「えっ。なんですか、先輩?」

「琴梨ちゃんって、彼氏と同棲してるってホント?」

【・・・・・・・・・・・・・・・ええっーーーーーーーーーー!!】

 ことさら大きな声で言ってくれたこの言葉には、その場にいた全員が度肝を抜かれた。

「え」

 あまりに衝撃的な質問だったため琴梨は小さく声を漏らした姿のまま硬直して身動き一つしない。
 周りのみんなも絶叫した後は呆気にとられたまま動きを止めている。

ポン   ポン  ポポン

 ただ、テニスボールだけが地面を跳ねて皆の後ろを転がってゆく。

「どうなの?ホントなの?」

「あっ、あっ、あの・・・」

 琴梨は先輩の声でようやく硬直が解けたのかシドロモドロに話し出した。
 しかし、その口は金魚のようにパクパクと動くだけで、まともな言葉は何一つ吐き出さない。
 しかも、真っ赤になったその顔は言葉よりもはるかに雄弁に事実を肯定していた。

「やっぱりそうなのねぇ〜」

「ええっ!あの、その・・・」

 妙にうれしそうな先輩の言葉を聞いて、琴梨の顔が耳まで真っ赤になる。
 琴梨、それじゃあ肯定してるのと同じだよぉ・・・。

ザワッ

 そして、先輩の言葉と琴梨の態度で、周りの皆がざわついてきたのが感じ取れた。
 マズイなぁ。このままじゃ琴梨が晒し者になっちゃう。

「琴梨!!」

 私は友人を危機から救うため、琴梨の側まで駆け寄るとその腕を取った。

「先輩!!」

 そして先輩の腕も同時に取る。

「えっ?」 「どうしたの鮎ちゃん?」

「こっち来て!!」

ズザザザザザザザザザザザザザ

 そして、2人を半ば引きずるようにしてその場を一目散に走り去った。
 残されたみんなは奇異な目をして私たちを見ていたけど仕方がない。
 強引だったけど、これしか方法が思いつかなかったんだもん。

「ちょっと、鮎ちゃん!いきなり何なのよぉ?」

 引きずっている最中、先輩が文句を言ってきたが構っていられない。
 それに、いきなりなのはそっちの方だ!


<下につづく>










  <上からのつづき> 岡村啓太 2003/11/22 15:57:40  ツリーに戻る

Re: お久しぶりです 返事を書く ノートメニュー
岡村啓太 <vhhyhipvfj> 2003/11/22 15:57:40
<上からのつづき>

「はー・・・はー・・・ぜー・・・ぜー・・・」

 そして、校舎裏まで2人を連れて来た時には私の息は切れきれになっていた。
 さすがに2人分の体重をここまで引っ張ってくるのは骨が折れたわ。

「もー・・・。靴の踵が磨り減っちゃうじゃない。どうしたのよ鮎ちゃん?」

「どうしたも、こうしたも・・・」

 この人は自分が何をやったのか本当に分かったないのだろうか?
 そんな気配はまったく見せず、先輩は不満そうに顔を曇らせながら、しきりに靴を気にしている。

「はー・・・。鮎ちゃん、いきなり走り出すんだもん。びっくりしたよ」

 琴梨の方はこの逃走劇の間に落ち着きを取り戻したのか、普通に話せるようになっていた。

「で、同棲してるんでしょ?」

 なのに、先輩が話を蒸し返したせいで琴梨の顔はまたすぐに茹で上がった。

「ど、どど、同棲じゃないですよ!ど、同居です。お母さんも一緒に住んでます!」

 でも、今度はちょっと言葉につまりつつも、ちゃんと言い返している。

「同居ねぇ・・・。でもそれって一緒に住んでる事には変わりないと思うけど」

「あぅぅ・・・」

「それに、琴梨ちゃんのお母さんって仕事でよく家を空けるんでしょ。その時はやっぱり2人っきりよね」

「そ、そうですけど・・・」

「じゃあ、やっぱりその・・・あれよね。色々・・・その・・・経験してるわよね」

 いつもズバズバとものを言う先輩が珍しく口篭もった。
 さすがの先輩もこういう話題には慣れていないらしい。
 ちょっと意外かも。

「え?何の事ですか?」

 しかし、鈍い琴梨には何の事だか分からなかったみたい。
 キョットンとした顔で先輩を見つめ返している。

「だから・・・」

 先輩はバツが悪そうにしながら琴梨の耳に口を寄せるとゴニョゴニョと何か囁いた。
 何を言っているかは私には聞こえなかったけれど、
 湯気が出そうなほど真っ赤に染まってゆく琴梨の顔を見ればだいたい予想はついちゃう。
 下世話な事を聞くなぁ・・・。
 と、思ってはみたものの。実は私も興味があったりする。
 琴梨にはそういう事をなんとなく聞き難いから今まで聞けなかったけど。 
 でも、まぁ・・・。あの2人の事だから、だいたい答えは分かってるんだけどね。

<下につづく>










  <上からのつづき> 岡村啓太 2003/11/22 15:59:22  ツリーに戻る

Re: お久しぶりです 返事を書く ノートメニュー
岡村啓太 <vhhyhipvfj> 2003/11/22 15:59:22
<上からのつづき>

「し、してないですよ。そんなことぉ!!!」

 琴梨はぶんぶんと両手を振りながら力一杯否定した。
 やっぱりね。

「そうなの?意外ねぇ・・・。
 こ〜んなに可愛い琴梨ちゃんと1つ屋根の下で暮らしていたら、私なら絶対押し倒してるよ」

 おいおい。

「ぁ・・・」

 ほら、琴梨もちょっとひいちゃってるし。

「あ・・・。あはは、冗談よぉ〜。やだなぁ琴梨ちゃん。ほんの冗談だってば」

 琴梨がひいているのに気がついたのか先輩が笑ってフォローをいれてきたんだけど。
 先輩、顔が引きつってるし、わざとらしいよ。絶対本気で言ってたでしょ。

「でも、キスぐらいはしたことあるでしょ」

「あ・・・・・・・はい」

 懲りずに尋ねてくる先輩に琴梨は消えそうなくらい小さな声で答えた。

「そうよねぇ〜。やっぱりしてるわよね、で、何回ぐらいしてるの?」

「えっ?何回って・・・」

「やっぱり、おはようからおやすみまで、お出かけとお帰りも合わせて1日4回は基本よね」

 それって基本なの?
 誰が決めたのそんなこと?

「そんな!!してない!そんなにしてないですよぉ!!」

「してないのぉ?じゃあデートの時限定にして焦らしてるのね。琴梨ちゃんってばテクニシャン」

 テクニシャン?あの琴梨が?それはないな。

「してないです」

 その質問にも琴梨は小さく答えた。

「えっ?じゃあ、いつしてるの?」

「一回しか、したことないです」

 あれれ、これは私も意外。
 さすがにもっとしてると思ってたけど、2人ともそこまで奥手だったんだ。

「じゃあ、そのファーストキスの時の話を聞かせてほしいなぁ〜」

「あの・・・えっと、その〜・・・」

 琴梨はもともと赤かった顔をさらに赤らめ、指をもじもじとさせ始めた。
 私は以前に聞いたことがあるけど、その時も琴梨は恥ずかしそうにしてたなぁ。
 その時、琴梨には‘絶対秘密にしてね!’って約束させられたんだけど。

「ぅ・・・」

 あっ、琴梨が母犬にすがる子犬のような目で私をちらりと見た。
 ‘助けて鮎ちゃん。シクシク・・・’と、でも言っているようなあの目。
 私、あの目に弱いのよねぇ。
 しょうがない、助けてあげようかな。

<下につづく>










  <上からのつづき> 岡村啓太 2003/11/22 16:00:23  ツリーに戻る

Re: お久しぶりです 返事を書く ノートメニュー
岡村啓太 <vhhyhipvfj> 2003/11/22 16:00:23
<上からのつづき>

「それより先輩は経験あるんですか?」

「えっ?なんの?」

「もちろん、キスの経験ですよ」

「あはは。私はその〜・・・」

「当然ありますよね。だって、先輩って男の人とたくさん付き合ってますもんね」

「えっ?男の人って、誰?」

 先輩はさも意外そうな顔で私を見てきた。
 よしよし、琴梨から注意を反らす事には成功したわ。

「私見た事ありますよ。
 なんか、いつも笑った顔してる年配の人とか、
 いつもむすっとした顔の若い人とかと一緒に歩いているところ」
 
「あ〜!けあふりぃさんと蒼き月の夜さんのことね」

 けあふりぃ?蒼き月の夜?なにそれ?人の名前?
 先輩って時々変なこと言うからついていけない時があるよ。

「あの人たちは違うの。あの人たちはただの友達よ〜」

「そうなんですか?」

「あの〜・・・。じゃあ私・・・そろそろ部活に戻りますね」

 そして先輩の意識が完全に私に向いた頃を見計らって、琴梨は声をかけてきた。

「あっ、琴梨ちゃん」

 先輩は慌てて琴梨の方を向いたがもう遅い。

「失礼します」

 そう言い残して琴梨はそそくさと立ち去って行った。
 よし!救出成功。

「う〜・・・。琴梨ちゃん冷たい・・・」

「ほら、先輩。私たちも部活に戻りましょう」

 べつに連れて行くような義理はないんだけど、ここに放置してゆくのはさすがに忍びない。
 寂しそうにうなだれている先輩を引き連れて私も部活に戻った。


<下につづく>










  <上からのつづき> 岡村啓太 2003/11/22 16:01:14  ツリーに戻る

Re: お久しぶりです 返事を書く ノートメニュー
岡村啓太 <vhhyhipvfj> 2003/11/22 16:01:14
<上からのつづき>

 そして部活も終り、私たちは先輩と一緒に校門を抜けた。
 何故先輩も一緒にいるの?
 そう聞きたかったけれど、琴梨がいる手前そうもいかない。

「琴梨ちゃん、鮎ちゃん。これからどこかに遊びに行かない」

 そして唐突に先輩が提案してくる。
 はっきりいって乗り気はしない。
 でも、琴梨はついて行くんだろうな。

「ごめんなさい。今日はちょっと・・・ダメなんです」

 えっ、ちょっと意外。

「えっ、そうなの・・・。あっ!さては彼氏デートね」

「えっ!あの・・・その・・・」

 先輩に指摘され、琴梨が急に口篭もった。
 これは本当に公一さんとデートだな。本当に分かり易い娘だなぁ。

「いいよ。私たちの事は気にせず行っといで」

「ありがとう、鮎ちゃん。じゃあ先輩。失礼します」

 私が助け舟を出すと、琴梨は私たちに小さく頭を下げると小走りで駆けて行った。

「ねぇ、鮎ちゃん。鮎ちゃんは琴梨ちゃんの彼氏って見たことあるの?」

「えっ?はい。ありますよ」

「どんな感じの人?」

「えっと・・・。そうですねぇ・・・」

 私は公一さんの姿を脳裏に浮かべてみた。

「優しい感じの人ですよ。琴梨の幼馴染だそうです」

「ふ〜ん・・・。気になるわねぇ・・・」

「えっ?」

 嫌な予感。
 これは早々に立ち去ったほうが良さそう。

「じゃあ、先輩。私もそろそろ」

「鮎ちゃん!」

ガシッ

 しかし、私は別れの挨拶をする前に先輩に腕を掴まれてしまう。
 ひょっとして・・・手遅れ?

「ちょっと見に行きましょう。付き合って」

「いや、あの・・・私は」

「レッツゴー」

 私は有無を言わさず先輩に連れ去られてしまった。
 とほほ・・・。

<下につづく>










  <上からのつづき> 岡村啓太 2003/11/22 16:02:41  ツリーに戻る

Re: お久しぶりです 返事を書く ノートメニュー
岡村啓太 <vhhyhipvfj> 2003/11/22 16:02:41
<上からのつづき>

 私は・・・いったい何をしているのだろう?

「どうやらここが待ち合わせ場所みたいね」

 部活の終わった放課後に、気の合わない先輩と一緒に友人を尾行。
 そして、物陰に身を潜めて友人を監視。

「そわそわして落ち着かない様子ね。しきりに時間を気にしているわ」

「はぁ・・・」

 嬉々として今の状況を楽しんでいる先輩を横目に私は小さく溜め息をついた。

「あっ!来たみたい」

「えっ」

 先輩の声につられて物陰から見てみると、琴梨がうれしそうに手を振っていた。
 視線を琴梨が見つめる先にずらすと、そこには公一さんの姿があった。 
 公一さんも手を振り返すと琴梨の側まで駆け寄って来て、何か二言三言話している。
 残念ながらここからでは何を話しているのか聞き取れない。

「あの人が琴梨ちゃんの彼氏か・・・」

 先輩はメガネの位置を整えると、真剣な表情で公一さんを観察しだした。

「う〜ん・・・。中肉中背、顔は2枚目半、それ程オシャレなわけでもない・・・。普通の人ね」

 たしかに・・・公一さんは特に特徴的な何かを持った人じゃあない。

「あっ、歩き出したわ。追うわよ、鮎ちゃん」

「まだ続けるんですか?公一さんの姿は確認したじゃないですか」

「2人が何処でデートしてるのか?今度はそれを確認しないと。ほら、行くわよ」

 うぅ・・・帰りたい・・・。


<下につづく>










  <上からのつづき> 岡村啓太 2003/11/22 16:03:19  ツリーに戻る

Re: お久しぶりです 返事を書く ノートメニュー
岡村啓太 <vhhyhipvfj> 2003/11/22 16:03:19
<上からのつづき>

 そして私たちは琴梨たちの後をこっそりついて歩いている。
 琴梨は公一さんと楽しそうに談笑しているんだけど、ちょっと様子が変だな。
 何かを気にしているのか、どうも落ち着きがないように見えるけど・・・。
 よく見ると、琴梨はさっきから公一さんの手をちらちらと見ている。
 そして自分の手ももぞもぞと動かしている。
 なるほど、どうやら琴梨は公一さんと手を繋ぎたいらしい。
 でも、恥ずかしくてなかなか出来ないってところかな。
 なんだか琴梨らしくて見ていて微笑ましい。

ボテッ

「あっ!」

 そんな事を考えていると、突然琴梨が転んだ。
 まったく・・・よそ見ばっかりしてるからだよ。
 あ〜あ、公一さんが慌ててるよ。

「琴梨ちゃん!」

「ええっ!?ちょっと・・・先輩、待った!!」

 いきなり琴梨に駆け寄ろうとした先輩を私は慌てて掴み止めた。

「鮎ちゃん。何で止めるのよ?」

「何でって・・・。今出て行ったら尾行してたのがばれちゃうじゃないですか」

「だって、琴梨ちゃんが倒れたのよ」

「ただ転んだだけですって。ほらぁ」

 私が琴梨の方を指差すと、琴梨はちょうどは半身を起こして照れ笑い浮かべているところだった。
 よかった。どうやら怪我はしなかったみたい。

「・・・そうみたいね」

 琴梨の無事な様子を見て安心したのか先輩も落ち着きを取り戻してくれた。
 そしてそのまま様子を伺っていると、公一さんが琴梨に向かって手を差し出した。
 琴梨は差し出した手に掴まって起き上がる。
 そして身体を叩いて埃を払うと、2人はそのまま手を繋いだまま歩き出した。
 あらら、まぁ、経過はともかく、願いが叶って良かったね、琴梨。
 こういうのって、何て言うんだっけ・・・。
 転ばぬ先の杖・・・じゃない。
 七転び八起き・・・も、違うし。
 棚から牡丹餅・・・も、ちょっと違う。
 
「うれしそうにしてるわね、琴梨ちゃん。災い転じて福を成すって感じかしら」

「そう、それ!」

「えっ?なに鮎ちゃん?」 

「あっ、いえ・・・何でもないです」

「ん?」 

 あ〜あ・・・。いらない恥をかいちゃった。
 先輩に不思議な娘でも見るような目をされちゃったよ。
 それに、先輩に先に言われちゃうなんて・・・。ちょっと悔しい。

<下につづく>










  <上からのつづき> 岡村啓太 2003/11/22 16:04:12  ツリーに戻る

Re: お久しぶりです 返事を書く ノートメニュー
岡村啓太 <vhhyhipvfj> 2003/11/22 16:04:12
<上からのつづき>

 そうこうしている内に2人は目的地に着いたらしく、とある建物に入っていった。
 その建物とは

「ねぇ、鮎ちゃん。ここって・・・」

「ラルズストアですね」

「あの2人っていっつもこんな所でデートしてるの?」

「さぁ、どうでしょうか?」

 近所の主婦ご用達のラルズストア。
 たしかに琴梨はここが好きだしよく来てるけど・・・。
 さすがにデートに最適な場所とは思えない。
 と、いうことは・・・。

「まぁいいわ。とにかく後をつけましょう」




 そしてラルズストア内。
 今、私たちの目の前では公一さんがカートを押し、琴梨が食材を物色している。
  
「これって・・・もしかして夕飯の買い物をしているだけなんじゃ・・・」

 そんな2人の姿を見て、ようやく気づいたのか先輩がそう呟いた。

「もしかしなくてもそうだと思いますよ」

 私はここに着いた時点で気づいていたけど。

「デートじゃないじゃない。琴梨ちゃんの嘘つき〜〜」

 先輩、琴梨は一言もデートだなんて言ってなかったよ。

「あ〜あ、期待して損しちゃった」

 どんな期待をしてたんだか。ちょっと聞いてみたい気もするけど止めておこう。
 そんな先輩は放っておいて、私は琴梨に視線を戻した。
 琴梨は実にうれしそうに食材を見て周っている。
 琴梨って洋服とか見ている時より、食材とか見ている時の方がうれしそうに見えるのよね。 
 
「ねぇ鮎ちゃん。あの2人って恋人同士というより、どちらかと言えば夫婦に見えない」

「見えますね」

 カートを引いて2人で夕飯の材料を選んでいる姿はまさしく夫婦のそれにしか見えなかった。
 今度、琴梨にそう言ってあげようかな。
 きっと恥ずかしそうにしながらもよろこんでくれそう。
 あっ。でも、言ったら尾行してた事がばれちゃうかな。

 その後、買い物を終えた2人はラルズストアから出て行った。
 私たちも2人に続いて出て行くと外はすでに薄暗くなっていた。
 もう少ししたら本当に真っ暗になってしまうだろう。
 この後は着いて行かなくても琴梨たちが家まで帰るだろう事は分かりきっている。
 暗くなってもいるし、私たちの尾行劇はここで終わりを告げることとなった。

「意外とつまんない結末だったわね」

 先輩、人を無理矢理つきあわせといて、言うセリフがそれですか。

「でもまぁ、琴梨ちゃんの楽しそうな姿が見れただけでもよしとしますか」

 先輩はそこそこ満足そうな笑みを浮かべると私の方に振り向いた。

「じゃあまたね、鮎ちゃん」

 そして、先輩はそう言ってにっこりと微笑むと去って行った。
 なんだかなぁ・・・。
 先輩に無理に連れまわされた一日だったけど、一応楽しかったし。
 まぁ、私もよしとしますか。

<つづく>










  あとがき 岡村啓太 2003/11/22 16:05:04  ツリーに戻る

Re: お久しぶりです 返事を書く ノートメニュー
岡村啓太 <vhhyhipvfj> 2003/11/22 16:05:04
あとがき

今回のお話は以前書いた秋田公一君と春野琴梨ちゃんのお話の続編です。
ですが、今回この2人はどちらかと言えば脇役です。
メインキャラは里中梢嬢であり、語り手は川原鮎ちゃんにお願いしております。

梢嬢は非常に扱い辛いキャラと思っていたのですが、
とあるHPで携帯版の北へ。のリプレイを読み、梢嬢の認識を改めました。
梢嬢はなんとなく学校では友達が少ない(もしかしたら1人もいない)ように思いましたので、
同じ部に所属している琴梨ちゃんと(一応鮎ちゃんとも)仲良くさせてあげられないかな?
と、思ったのが今回のお話を考えたキッカケです。
小説版でも琴梨ちゃんは梢嬢の事を変に思ってはいませんでしたしね。

このお話ですが、実はまだ続きます。
次回は今回のお話の流れから見ると‘おや?’と思うような人の一人称で語られています。
それでは、また来週お会いしましょう。










  読みましたですよ( ̄▽ ̄)2003/11/26 00:14:53  ツリーに戻る

Re: お久しぶりです 返事を書く ノートメニュー
<okxykqpyon> 2003/11/26 00:14:53
読みましたですよ( ̄▽ ̄)

今回は、梢ちゃんと鮎ちゃんですね。
どちらかというと犬猿の仲になりそうな二人をよくまとめて
あると思いました。

鮎ちゃんの語りが良い感じです(笑)

今回のSSは、近くFeatureのSSに掲載させて頂きますね。

まだ次回も続く様ですね。
頑張ってくだされ〜。

ではでは(^^)/










  │└読んでくださってありがとうございます 岡村啓太 2003/11/27 10:24:18  (修正1回) ツリーに戻る

Re: 読みましたですよ( ̄▽ ̄) 返事を書く ノートメニュー
岡村啓太 <vhhyhipvfj> 2003/11/27 10:24:18 ** この記事は1回修正されてます
読んでくださってありがとうございます
お久しぶりです、雄さん。
またお世話になります。

梢嬢(私はなぜか彼女だけは嬢付けです)は、うまく描けている自信がなかったのですが、
鮎ちゃんの語りは気にいっていただけた様なので一安心です。

掲載に関してですが、3話で完結しますので完結した時点で全部一気に掲載して下さい。
その方が手間も余りかからないでしょうし、
今回はそんなにお待たせはしないはずですから。

それでは、よろしくお願いします。










  読ませて頂きました! 長良川の鮎 2003/11/29 17:31:38  (修正5回) ツリーに戻る

Re: お久しぶりです 返事を書く ノートメニュー
長良川の鮎 <guhftnjywu> 2003/11/29 17:31:38 ** この記事は5回修正されてます
読ませて頂きました!

岡村さんお久しぶりです&新作読ませて頂きました。

各個人の性格と行動、措かれた背景を見事に把握しており、
また、心理と心情を忠実に再現された結果、読んでいると自然に
登場人物達が私の頭の中で浮かんで動いてくれます。

梢ちゃんならこう話すだろう、鮎ちゃんならこう動くだろう、
琴梨ちゃんならこういう態度を示すだろう・・・
個々の描写が見事に文章に表れ、その結果、「文章の軽快さ」
という過去の作品に少なかったものが多く出て来ています。
前作から数ヶ月、確実に腕を上げていること、成長していることを
切に感じさせられます、読み手としては嬉しい限りです!

私の特殊というべきか癖というべき事で、
「文章の会話部分を常に担当する声優さん(この場合、千葉さん、
 広橋さん、豊口さん)の声に変換して読んで聴く」
という作業を小説を読む時はしています。
全くの新作小説などはこんなことをしませんが、アニメやゲーム、
CDドラマ化などでその人物に声を当てられている場合は他の
小説でも例外なくする行動です。

面白いことに表現の悪い小説はこれをすると全然噛み合わない、
声に変換出来ないなどの障害、違和感が出てきます。
が、この小説は北へ。発売以前、初めからその関係者のうちで
作られていたサイドストーリーのように琴梨ちゃんが一生懸命演じる
千葉さんの声で、鮎ちゃんが気配りを念頭に話す広橋さんの声で、
そして無邪気を表現しながら梢ちゃんを演じる豊口さんの声で・・・
それぞれごく自然に、すごく当たり前のように聴こえてきます。
「文章を読む」のではなく「文章を聴く」、他人には変に思われる
かもしれませんが私にはそれが人に言えない気持ち良い感覚に
させてくれます。

最後に恒例?のダメ出し(汗)
【・・・・部活に戻った。
     (行間)
そして部活も終わり、私たちは〜・・・】

の時間経過の部分の表現が個人的には少し違和感を感じます。
「そして」は前文章を引継ぐ、もしくは続く意味合いがあるので
時間経過が激しい部分の繋ぎの言葉として適切では無い気がします。
「そして」は無くても良いくらいです。
(「やがて」とか「まもなくして」など時間経過を示す言葉なら
  別ですが・・)
少なくとも「そして」を使う場合、それ一言ではなく、例えば
「そして何事もなかったように部活も終わり、・・・」
など、前後の繋がり、特に前半の出来事を確認出来るような言葉
がないと、後半の出だしの文章全体が死んでしまう感じがします。
まあ、これは総て私の個人的主観なので、別に間違いでもなければ
読み手が気が付くものでもないので、逆に「そして」の方が自然に
その話の流れとして理解されて行くべきものかもしれません!

もう一つは「好機」→「好奇」、変換ミスでしょうね!
では、










   └いつも感想ありがとうございます 岡村啓太 2003/12/01 01:28:57  ツリーに戻る

Re: 読ませて頂きました! 返事を書く ノートメニュー
岡村啓太 <vhhyhipvfj> 2003/12/01 01:28:57
いつも感想ありがとうございます

お久しぶりです長良川の鮎さん。
いつもお世話になってます。

今回はいっぱい誉められてうれしいな。
梢嬢に関しては不安いっぱいだったのですが、
問題なく読めた様で安心しました。

鮎さんの持つ癖の事ですが、私もしてますよ。
別に特別な事ではなくみんな自然としてるんじゃないでしょうか?

ダメ出しもありがとうございます(っていうのも変な感じですが)。
悪い点も率直に言ってくるとホントの助かります。
自分では気づき難いものですから。
今回のご指摘も今後生かしていきたいと思います。

誤植取りは気をつけてはいるんですが、
どうしても残ってしまう時があるのです。
ご指摘、どうもありがとうございます。

続きのお話の感想も待ってます。
それでは。


「北へ。」 EXIT
新規発言を反映させるにはブラウザの更新ボタンを押してください。