・・・ツヴェト・ザカータ・・・夕焼けの赤。
ロシアの大地を冬の間覆っている雪達のように白かったはずのスズラン
達は、今正に夕焼け色の世界へと生まれ変わっていました。
優しくて暖かいとても綺麗な赤色の世界。
それは、お父さんの作ったベネチアン・グラスのように・・・
ターニャ>
ねぇお父さん・・・
わたし、お父さんにお願いしたい事出来ちゃった。
言ってもいい・・・かなぁ?
父>
ん?言ってごらん。
ターニャ>
・・・あのね・・・わたし・・・お父さんに赤いスズランを作って欲し
いの。
父>
赤い・・・スズラン?
ターニャ>
うん!!今ここにある真っ赤でとっても綺麗なスズラン・・・
これをお父さんのガラスで作ってくれないかなぁ〜て。
・・・駄目?
・・・お父さんは、目を閉じて考える表情を取ると、その後ゆっ
くりと目を開きわたしを見て・・・こう言いました・・・
父>
なぁターニャ、お前は、将来ガラス職人になるつもりは、あるのかい?
ターニャ>
うん!!わたしなりたい!!
お父さんと同じガラス職人になりたい!!
父>
そうか・・・ターニャは、お父さんと同じガラス職人になりたいのか・
・・
ターニャが後を継いでくれるのなら、そりゃもう父さんも嬉しいよ・・
・それじゃあターニャ。
ターニャ>
なぁ〜に?お父さん?
父>
そのお前の言う赤いスズランは、ターニャ、お前自身で作りなさい。
ターニャ>
え?わたしが?
父>
そうだよ、ターニャ。
・・・そう言うと、お父さんは、わたしを抱き寄せ膝の上に乗せて、そ
のままペタンとお花畑の中へと座り込みました。
わたしの鼻先をくすぐるように漂うスズラン達の清く甘い薫り・・・
上からの続き。その2
父>
いいかい、ターニャ。
もし本当に父さんの後を継いでくれるのなら、ターニャの考えた作品を
作りなさい。
父さんは、この広大なロシアの大地に神々と広がる赤い世界を見て、何
としてもガラスの色として成し遂げたいと思った。
そして長い時間を掛けてついに完成させた。
今ターニャは、このスズラン達を見てとても綺麗と感じ、そしてガラス
細工にしたいと思ったのだろう?
だったらその思いを糧に、ターニャ自身の作品として完成させなさい。
今、この目の前に広がる世界をしっかりと目と心に焼き付けて、自分の
作品として完成させてごらん。
・・・目標を持つ事。
それは、夢を成し遂げる為の第一歩だよ。
・・・お父さんは、変わらぬ笑顔の中にわたしへひとつひとつしっかりと伝えるようとする真剣さを瞳の中に映しながらそう言いま
した。
わたしは、そんなお父さんの瞳をじっと見詰めていました。
そして・・・
ターニャ>
うん、解ったよ。お父さん!!わたし、絶対に赤いスズランを作ってみ
せるよ!!
わたし・・・お父さんに負けないもん!!
父>
そうか・・・そうか、ターニャ。
父さん、それを聞いてとっても嬉しいよ。
今のターニャは、本当に頼もしく見えるよ。
ターニャ>
うん!!わたし頑張るもん!!
・
・
・
・・・お父さん、わたしは今日本にいます。
かつてお父さんが訪れた国です。
・・・今わたしは、夕焼けを見ています。
ロシアでお父さんと見た夕焼けと同じ夕焼けを見る事の出来る場所を見
つけたんです。
・・・もしかしたらお父さんもここから夕焼けを見ていたのかもしれま
せんね。
・・・わたし、頑張ってます。そして必ず約束を果たします。
わたしのガラスへの道は、そこから始まるんですよね?
・・・わたしの大好きなお父さん・・・