【ストーリの進行】

 このゲームで特徴的なのは、主人公が拠点とする場所がヒロインごとに五カ所もあるという
所だろう。
 主人公は、ヒロインにガイドされる形で魅力的な北海道各地を巡っていく。
 評価できるのは、各観光地の写真とムービーのクオリティの高さだ。
 隠しポイントでもムービーがあり、高画質の北海道を満喫できる。
 また、ムービーは想像以上に多く、観光地巡り、デートでも数多くのムービーが再生され、
旅行のリアリティをさらに増している。
 また背景に流れるムービーの中には、CG処理を施され、エンドレスでムービー再生が行われ
るようになっている部分がある。
 つまり、水は永遠に流れ、海は打ち寄せ、風で木々が揺れる様がずっと続くのだ。
 しかも、この動画のつなぎ方が秀逸で自然で、この背景の前にヒロインがいると、デート感
覚がぐっと増す。
 大量の実写映像とムービー。これは、北海道の魅力を伝える、という部分では成功している
といえるだろう。
 観光地紹介等での説明不足などの不満があるが、それはシステムレビューに譲るとして、こ
こでは取材班と開発者の苦労を心から賞讃したい。
 ただ、主人公が一人の時は、殆どイベントが起きない。
 サブイベントとして連鎖するものはあるにはあり、前作で『誰もいないみたいだ』などと観
光客らしからぬ発言をしていた事よりは遥かに反応は良くなったが、単発イベントで、至る所
で何かしらの発見を主人公にして欲しかった。

 さて、このゲームでは、【それぞれのヒロインは互いに干渉しない】。
 つまり、基本的に三角関係はなりたたず、それゆえにドロドロした物語は成立しにくいと言
う事だ。(例外はあるが)
 ギャルゲーの基本として、一つの箱庭に全てのキャラクターが押し込められて、そこで互い
に男女が干渉しあう事で物語を盛り上げていく所がある。
 「北へ。DD」はそれがないため、主人公とヒロインだけの交流という、大変限られた小さな
交流のみに終わってしまう。  
 友人という重要なポジションもあるにはあるのだが、鍵を渡してさっさと出て行き、いつ帰
ってもいないという無責任極まりない状態なので、これは交流しているとはとても言い難い。
 しかしこの状況は各ヒロインと、他のヒロインに対して罪悪感を覚える事無く思う存分触れ
合えるという利点があるのだが、逆に登場人物が少ないため、人間関係のつくり出す、小説の
ような複雑かつ伏線を張るような巧妙なストーリーは成立しにくい。
 そのため、とても限定的で限られた世界のストーリーに終止し、半分盛り上がりを欠く形で
エンディングまで持っていかれてしまう。
 せめて、もう少しヒロイン同士が関わりあう余地があれば、ストーリーに変化ができてよか
ったかもしれない。
 また、舞台が各都市に限定されてしまい、ゲームスタート時に攻略ヒロインを宣言され限定
されてしまうため、北海道を巡り出会う偶然というシチュエーションは感動を薄れさせ、出会
いが単調になりがちだ。
 ただ、ヒロイン一人を集中してストーリーが展開するため、プレイヤーはヒロインをとても
身近に感じやすい、という利点はあるのが救いだろう。
 このゲームの最大の目的である【ダイヤモンドダストを見る】という事だが、冬編デートの
おまけ、思い付きという形で行われ、【主人公とヒロインがダイヤモンドダストを見なければ
ならない理由】がとても軽すぎるのも問題だ。
 ヒロインによっては、わざわざ見に行く必要もない女の子もいる。
 ダイヤモンドダストを見る事で自分の何かが変わるという事であるならば、夏編の段階から
幾度か伏線を張っておく等、このゲームのタイトルにもなっている【ダイヤモンドダスト】を、
もっとプレイヤーに印象づける準備を行っておかなければならなかったはずだ。
 いきなりラストでダイヤモンドダストが降ってくるので、少し感動が薄い。
 この準備不足が、ダイヤモンドダストの盛り上がりを欠く原因になっている。
 本来であればこの準備は冬編デートでもできたはずなのだが、冬編はデート先が限定され過
ぎており、自由度はカケラもない。
 できれば、最終目的地以外はD.B.Sにし、そこで時間とイベント数限定で様々な出来事を起こ
してダイヤモンドダストへの伏線にした方が良かっただろう。
 伏線と終盤の加速。
 これを上手く利用できなかった事が、盛り上がりを欠いた最大の原因だろう。
 まあ、主人公が経験浅い若者であるという点を考慮すれば、淡白にならざるを得ないという
のも理解できるのだが、ダイヤモンドダストが、プレイヤーの感動までも凍らせてしまっては
元も子もないと思うのだ。
 ダイヤモンドダストのイベント自体は、ヒロインの台詞と口パクを合わせたり、微妙な表情
の変化をつけてリアリティを出したりと、とても秀逸だ。
 だからこそ、そこに至るまでの【過程】を、もう少し凝って欲しかった所である。


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