陽子の願い


ジリリリリリリリ

 私は今日も目覚ましの音で目を覚まされた。
 いつもなら目覚ましを止めればすぐに目も覚めてくるんだけど、さすがに今日はまだ眠い。
 昨日は公一さんとトランプをしていたら何時の間にか2時になってたし。
 その後お母さんが帰ってきて、色々している間に3時前になってたからなぁ・・・。
 まだ春休みだからホントはまだ寝ててもいいはずなんだけど、
 起きてお母さんのためにご飯作ってあげないと、お母さん朝ご飯抜いちゃうから。
 でもお母さんも同じくらいに寝たはずなのに今日もお仕事なんて大変だよね。



 洗面所で軽く身支度をした後リビングに行くとお母さんが先に起きていた。

「おはよう、お母さん」

ふみゃーん

 朝の挨拶をするとソファーに座っているエルちゃんが先に返事をしてくれる。

「おはよう、琴梨。今日も早いねぇ。春休みなんだからもっと寝てりゃいいのに・・・」

「ううん、平気だよ。朝ご飯用意するね」

「ああ、ありがと」

 お母さんはテレビをつけてニュースに合わせるとソファーに座って新聞を広げた。
 一見、普通の朝の風景のようにも見えるけど、新聞を読む事もニュースを見る事もお母さんの仕事の一部だ。
 TV局なんかに勤めているから、世の中の情報には通じてなければいけないからだってお母さんは言っていた。
 だから家では5種類もの新聞を取っている。
 それを全部読むのがお母さんの朝の日課だ。

「おまちどうさま」

「ありがと、それじゃあいただこうかね」

「いただきます」

「いただきます」

 さすがにお母さんもご飯を食べているときには新聞を読んだりはしない。
 なぜなら以前私が怒ったからだ。
 やっぱりご飯を食べている時は家族の会話を楽しみたいから。

「ところで公一くんはまだ寝てるのかい?」

「そうみたいだよ」

「ま、疲れてるんだろうさ。起きるまで寝かせておいてやりな」

「うん」

 ホントはみんなで一緒に朝ご飯食べたかったけど。
 でも焦らなくても機会はまたあるよね。
 だって一緒に暮らしてるんだから。



「ごちそうさま」

「ごちそうさま」

「それじゃあ、行ってくるからね。公一くんと仲良くするんだよって、言うまでもないか」

「もぉ・・・昨日からそんなことばっかり言うんだから・・・」

 ちょっとおどけてそう言うお母さんを私は軽く睨みつけた。

「ははは、じゃ、行ってきます。それと今日は早く帰って来れるはずだから」

「うん、分かったよ。いってらっしゃい」

みゃみゃーん

 エルちゃんもリビングで見送りの挨拶をしていた。



「ふぁ・・・」

 お母さんを見送った後、洗い物を済ませると、ついアクビが出た。
 さすがに今日はまだ眠い。
 もう少しだけ寝ようかな。
 でも公一さんが起きた時には起きていてあげたいし・・・。

ピンポーン

 そんなことを考えていると、不意にドアホンが鳴った。
 なんだろ?こんな朝早くから。

「はーい」

 私は声を返しながら玄関に向かった。


公一1

コン コン

「公一さーん。起きてー」

 僕はまどろみの中、琴梨ちゃんの声を耳にして目を覚ました。

(・・・?)

 目が覚めると見なれない部屋が見え、最初は自分がどこにいるのか分からなかった。

「起きて〜公一さ〜ん」

コンコンコン

 そしてもう1度琴梨ちゃんの声を聞き、ようやく自分が春野家にいる事を思い出した。
 いつから声をかけてくれていたのか分からなかったけど、琴梨ちゃんの声には不安そうなニュアンスを含ませていた。

「起きたよ、琴梨ちゃん」

 だからドアを開けるより先に声を返した。

「ああ、よかった・・・」

 するとドアの向こうからは安堵を含んだ声が返ってきた。

ガチャ

「おはよう、琴梨ちゃん」

 ドアを開けるとそこには安心したような表情の琴梨ちゃんが立っていた。

「おはよう、公一さん。あのね、引越しの荷物が届いたの。それで業者の人が確認してって」

「あっ!」

 僕はその一言で完全に目が覚めた。
 今日は引越しの荷物が届く事になっていたんだった。
 のんびり寝ている場合ではなかったのだ。

「ごめん、琴梨ちゃん。すぐ行くから」

「うん。早く来てね」

 僕は大急ぎで着替えると玄関に向かった。
 そして業者と手続きを終えると、荷物を運び込んでもらった。



 そして一段落ついたところで改めて荷物を見てみた。

(こんなにたくさんあったっけ?)

 そこにはけっこうな数のダンボールが積みあがっていた。
 これを今から整理するのかと思うと気が重くなってくる。

「ふぅ〜」

 そのためか知らぬ間に溜息をついていた。

「公一さん。私も手伝おうか?」

 そんな僕を見かねたのか、琴梨ちゃんが手伝いも申し出てきた。

「そんな、悪いよ」

 僕はそこまでしてもらうのも気が引けたので断ろうとした。

「ううん、大丈夫だよ。今日は私暇だし。それに2人でした方が早く終わるでしょ」

 けれど琴梨ちゃんはすでにやる気になっており、笑顔でこう言われては断れなかった。

「ありがとう、琴梨ちゃん。それじゃあお願いするよ」

「うん、まかせてよ」

 琴梨ちゃんはうれしそうに返事をしてくれた。
 


 しかし僕はそれを少しだけ後悔することになった。

 まず琴梨ちゃんはダンボールに手をかけ持ち上げようとしたのだが、

「う〜ん」

 ダンボールは持ち上がらなかった。

「琴梨ちゃん。重いのは僕が運ぶから軽めのをお願い」

「うん、分かった」

 見かねた僕がそう頼むと軽めのダンボールはなんとか持ち上がった。
 だけど、その後ろ姿はフラフラしていて危なっかしくて見ていられなかった。



「琴梨ちゃん。ダンボールは僕が運ぶから、運んだ荷物を整理してくれるかな」

 見かねた僕はダンボールを運び終えた琴梨ちゃんにそう頼んだ。

「うん。ごめんなさい、公一さん・・・」

 しかしそう言うと、琴梨ちゃんはあまりにもすまなさそうな顔になった。
 そんな顔を見るとなんだか悪いことを言ったようで、思わず罪悪感にかられてしまう。

「謝る事ないよ。それじゃあお願いするね」

 けれどあのままダンボール運びを続けさせるわけにもいかないので、僕はそのまま玄関に戻った。



琴梨2

「ふぅ・・・」

 私はダンボールから荷物を取りだしながら溜息をついた。
 自分から手伝いを買って出ておきながら、ダンボール1つ満足に運べないのだから・・・。

(呆れられちゃったかな・・・)

 そんな思いが胸の中をよぎる。
 すると途端に不安になってくる。

(もしかして嫌われたかも)

フルフルフル

 私はそんな考えを打ち消すために頭を振るった。
 そして何も考えないようにして、今は手を動かすことにだけ集中した。



 そして作業を開始してからしばらく経った時、

ピンポーン

 今日2度目のドアホンが鳴った。

「はーい」

 私が返事をして玄関に行くと、公一さんが玄関を開けたところだった。

「こんにちわーって、ええっ!!なんで?うわぁ、久しぶり!こっちに来てたんだ。あっ、そう言えば琴梨がそんなこと言ってたよね」


 すると、玄関からは鮎ちゃんの声が聞こえてきた。

「ホント、久しぶりだね。鮎ちゃんだったよね」

「そう、川原鮎。憶えててくれてうれしいよ」

 公一さんの背に隠れて見えないけど、たぶん鮎ちゃんが来たんだと思う。

「鮎ちゃん?」

 私が公一さんの後ろから顔を出すと、思ったとおり鮎ちゃんがいた。

「あっ、琴梨。遊びに来たよ」

 私の顔を見た鮎ちゃんが笑顔で挨拶してくる。

「ところでカレ何時来たの?」

「昨日だよ」

「へ〜。で、今は何してるの?」

 今度は少し散らかっている玄関を見て尋ねてきた。

「僕の引越しの荷物の整理だよ」

「あ、そうなんだ。悪い時に来ちゃったかな・・・。そうだ、私も手伝おっか?」

「えっ!そんな悪いよ」

 公一さんは私の時よりも困った顔で断っていた。

「いいの?鮎ちゃん。けっこう大変だよ」

「そんなの大丈夫だよ。暇だったから遊びに来たんだし。それにみんなでやった方が早く済むじゃない」

 鮎ちゃんは私が公一さんに言ったのと同じようなことを言ったので少しおかしかった。

「わかったよ。ありがとう、鮎ちゃん」

「いいのいいの。困った時はお互いさまって言うじゃない」

「じゃあ鮎ちゃんは琴梨ちゃんと一緒に荷物の整理をしてくれるかい?」

「はーい」

「それじゃあ、こっちだよ鮎ちゃん」



鮎1

「わ、散らかってるね」

 私は部屋に入ると思わず言ってしまった。
 部屋にはほとんど物が無いくせに、床だけには物が散らばっていたからだ。

「あたり前だよ。さっき始めたばっかりだもん。じゃあ始めよっか」

「あ、その前にちょっといいかな?」

 私はどうしても琴梨に聞いておかなければならないことがあった。

「なぁに?」

 琴梨は不思議そうな顔をして私を見た。
 私はそんな琴梨に顔を近づけて小声で尋ねた。

「琴梨の彼氏って、名前なんだっけ?」

「えっ!!忘れちゃったの!?」

 琴梨は目を丸くして驚いた。
 琴梨が可愛いのは、こういう風に感情がすぐ表に出てくるところだと思う。

「ど忘れしちゃって・・・。咽の所までは出かかってるんだけど・・・」

 私は咽を押さえて苦しそうなジェスチャーまでしてみせた。

「もう、公一さんだよ。秋田公一さん」

「あ、そうそう公一さんだった」

 よかった、やっと思い出せたよ。
 こういうのって思い出せないと気持ち悪いんだよね。

「もぉ、何で忘れちゃうかな・・・」

 でもすっきりした私とは逆に琴梨はむくれた顔になってしまった。

「ごめんごめん。ホントにど忘れなんだって。それよりどうだった?」

「どうって、何が?」

 琴梨って時々鈍いなって思うのはこんな時だ。

「カレと一緒に暮らしてみてどうだった?」

「えっ、あっ、うん・・・」

 すると思ったとおり琴梨は真っ赤になった。
 ホントに分かり易い子だ。

「うん、じゃ分からないよ。どうだったの?」

 でもこんな顔をされると余計にからかいたくなってしまう。

「うれしいよ・・・」


鮎2

「ほぉ・・・どううれしいのかなぁ?」

「えっ、あの・・・今までだったら、電話で声しか聞けなかったけど、今ならちゃんと顔も姿も見えるし・・・。
そばに居てくれてるって実感できるし・・・。それにあったかいし・・・」

 琴梨は赤い顔をうつむかせながらもうれしそうに話してくれた。
 でも今変なことを言った気がする。

「あったかいって何が?」

「あのね、抱き締められるとすっごく・・・って、ええ!!わ、私何言って・・・」

 琴梨は自分が恥ずかしいことを言っていることに気づいたらしく、さらに赤くなりながら自分で口を押さえた。

「うんうん。わかったわかった。もうお腹いっぱいって感じだよ。ご馳走様」

「鮎ちゃ〜ん・・・」

 あ、琴梨が泣きそうな顔になってしまった。
 からかいすぎたかな?

「ごめんごめん。幸せなのは十分に分かったからさ」

「う〜」

 私が頭を撫でてやると、すねたように上目遣いで私を見てきた。
 琴梨はこんな顔をしても可愛い。
 ちょっとずるいなって思う。

「2人とも・・・。口だけ動いてて、手が動いてないぞ!」

「うわ!」

「きゃ!」

 そこにダンボールを抱えた公一さんがやって来たので私たちは驚きの声をあげた。

「あっ、ごめんなさい」

 そしてとりあえず謝っておく。
 たしかにこの部屋に来てから何もしていなかったし。

「しゃべっててもいいけど、手も動かしてくれよ」

 公一さんはダンボールを置くと笑って出ていった。

「ふぅ・・・」

 怒ってはいないみたいだったから安堵の吐息が出た。

「たしかに手伝うって言って何もしてないのはマズイよね。そろそろ始めよっか」

 そう言って琴梨の方を向くとなんだか琴梨の様子がおかしかった。

「琴梨?」

 琴梨は固まったまま動かなくなっていた。

「ねぇ鮎ちゃん。さっきの・・・聞かれちゃったかな?」

 そしてポツリと呟いた。

「あっ・・・」

 そういえば聞かれたかもしれない。

「・・・」

 見ると琴梨は困った顔になっていた。
 琴梨に悪いことしちゃったかな。

「ごめん、琴梨」

「う〜」

 私は手を合わせて謝ったけど、琴梨の困った顔は治らなかった。



公一2

 ダンボールをすべて運び終えた僕は2人と一緒に荷物の整理をしている。
 のだけれど、さっきから琴梨ちゃんが僕の顔を見てくれない。
 話しかけても生返事しか返してくれないし。
 どうしてだろうか?心当たりはないんだけど・・・。
 さっき鮎ちゃんと何か僕のことを話していたけど、そのせいだろうか?

ぐー
 
 その時、僕のお腹が鳴り、その音が盛大に部屋に響き渡った。

「あっ・・・」

 僕は慌ててお腹を押さえたけれど、遅かった。
 2人はすでに僕に注目していた。

「プッ」

 まず琴梨ちゃんがふきだした。

「あはは、おっきなお腹の虫だね」

 そして鮎ちゃんが笑い出した。

「ははは・・・」

 僕は照れ笑いをするしかなかった。
 そういえば今日は朝から何も食べていなかったな。

「ふふふ・・・。公一さん、そろそろお昼にしよっか」

 そして琴梨ちゃんはようやく笑顔を僕の方に向けてくれた。
 これはお腹の虫に感謝をしなければいけないかもしれない。

「うん。ありがとう」

「鮎ちゃんも食べるよね」

「うん。そういえば琴梨の料理食べるの久しぶりかも」

「じゃあ僕らはお昼が出来るまで休憩にしようか?」

「賛成ー」

 と、いう鮎ちゃんの同意により僕らは休憩となった。



鮎3

 休憩のためリビングに来たところで私は改めて公一さんを見てみた。
 前に数回だけ会ったことがあるけど、その頃とちょっと雰囲気が違ってる気がする。
 初めて会ったときも結構いいかなって思ってたけど。
 よくは分からないんだけど、その頃より精悍になったというか、前より落ち着きがあるっていうか・・・。
 そういえば最近琴梨もキレイになってきている気がする。
 やっぱり好きな人ができると人間変ってくるもんなんだろうか?

「悪いね鮎ちゃん。せっかく遊びに来たのにこんなこと手伝わしちゃって」

 私が見ている事に気づいたのか、公一さんが話し掛けてきた。

「平気平気。これでも楽しんでるから気にしないでよ。それよりも公一さんって琴梨とどこまでいってるの?」

 私はこれを期に早速質問をぶつけてみた。

「えっ?どこまでって?」

 でもどうやらこの人も琴梨と同様に鈍いらしい。

「一緒に住んでるくらいだから、キスは当然済んでるよね。そこから先はどのくらい進んでるの?」

「ええっ!!あっ、いや、その・・・どのくらいって言われても・・・」

 公一さんは照れたような困ったような顔をして頭をかいた。

「昨日は琴梨のこと抱き締めたんだよね」

「ええっ!!ど、どうしてそれを・・・」

 そう言うと、途端にうろたえだした。
 この人も分かり易い人だ。

「やっぱりその後は押し倒したの?」

「そんなこと出来るわけないだろ!」

 すると真っ赤になって否定してきた。
 琴梨が‘抱き締められてあったかい’なんて言うから、もしかしたら最後までいってるのかなって思ったけど。
 この様子ではホントに何にもないんだろうな。
 でも今時こんな人は珍しいかも。
 ま、だからこそ琴梨も好きになったんだろうけど。

「そ、それよりも鮎ちゃん。最近ライブ活動始めたんだって。どう、調子は?」

 それから公一さんは少し強引に話題を変えてきた。
 あんまりいじめるのも可哀想なので私はその話題にのってあげた。
 それに自分のこともしゃべりたかったしね。



公一3

 僕らは琴梨ちゃんが作ってくれたパスタ料理を食べた後、再び作業を再開した。
 と、いってもほとんど午前中の間にやってしまっていたので、すぐに終わってしまったけど。
 
「2人ともありがとう。本当に助かったよ」

「どういたしまして」

「うん。貸し1つね」

「えっ!?」

「はは、冗談だよ」

「ふふ、鮎ちゃんったら。じゃあ私お茶入れるね」

「ああ、ありがとう」

 そしてしばらくすると琴梨ちゃんがお茶のセット一式を持ってきてくれた。、
 でも何故かその手にはUNOも握られていた。

「2人ともUNOしない?」

「琴梨ってホントUNO好きだよねぇ」

「いいじゃない。ね、しようよ」

「そうだね。鮎ちゃんは?」

「OK」

 と、いう訳で3人でUNOをすることになった。



「ところで公一さん、知ってる?琴梨ったら、学校では
昨日は公一さんと電話でこんなこと話したの、とかあんなこと言ってたの
とか、公一さんのこと逐一話してくれるんだよね」

「えっ」

 ゲームとゲームの合間に鮎ちゃんは突然僕に琴梨ちゃんのことを話し出した。
 しかもそれは聞くのはちょっと恥ずかしくもうれしい内容だった。

「えっ!ちょっと鮎ちゃん!」

 琴梨ちゃんは突然のことにカードをきる手が止まってしまう。

「それに公一さんの大学合格が分かった時なんて電話までしてきて、その上電話の向こうで嬉し泣きしてたんだよ」

「そうなんだ・・・」

 そして話の内容はどんどん恥ずかしさの度合いを増していった。

「わーー!や、止めてよ、鮎ちゃん!」

 それに比例して琴梨ちゃんの顔もどんどん赤くなってゆく。
 そして琴梨ちゃんは鮎ちゃんの口をふさごうとするのだが、鮎ちゃんは巧みにそれをかわしている。

「しかも公一さんの引越しが決まったときなんか」

「鮎ちゃん!!鮎ちゃんも初ライブの前日に急に電話してきて‘不安で眠れない’って泣いてたじゃない!」

 しかしここで琴梨ちゃんからの反撃が。

「わっ!琴梨。それは誰にも言わないって約束でしょ!」

 いきなりの攻撃にひるむ鮎ちゃん。
 僕は今日初めて彼女の困った顔を見た。

「鮎ちゃんだって秘密にしてくれるって言ってたのに・・・」

 琴梨ちゃんはすねたような顔をしながら鮎ちゃんを見た。

「あはははは。2人はホントに仲がいいんだね」

 僕はそんな2人の姿がおかしくって思わず笑い出していた。

「えっ?」

「・・・」

 すると、鮎ちゃんは驚いたような顔をし、琴梨ちゃんは恥ずかしそう顔になった。

 そして

「「うん、そうだよ」」

 2人同時に同じセリフを言った。

「だって親友だもんね」

「うん」

 2人は互いに微笑み合っていた。


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